母親になって後悔してる 読了
オルナ・ドーナト 著
鹿田昌美 訳
ショッキングなタイトルで、タブーに切り込んだような一冊です。
本書の調査はイスラエルが舞台なので、日本とは事情が異なるかもしれませんが、母親業が辛い!という気持ちは万国共通といえそうです。
本書で紹介されている母親になって後悔してる理由は、様々でこれといった結論はありません。
印象的だったのは、「私が産んだ子は素晴らしい人間だ。ただそれとは全く別問題で自分は母親になって苦しんでいる。」という意見です。
この相反する感情を持ち続けること(本書ではアンビバレンスと呼んでいる)自体がエネルギー消耗する行為ではないでしょうか。
母親という肩書きに苦しんでいる人が多い印象で、理由は子育てにまつわる様々なことが自分に合っていないと感じているようです。また、母であることに自分のアイデンティティがないという意見も興味深かったです。
私も、自己紹介をするとき、母であることや、子どもがいることを伝えることに抵抗があります。それがなぜなのか今までずっとわからなかったのですが本書を読んで、母という肩書きには自分のアイデンティティがないからだということに気がつきました。
母親業はやっているけれど、自分について語るときにもっと優先して伝えたいことがあります。
一方で、「私が産んだ子は素晴らしい人間だ。ただそれとは全く別問題で自分は母親になって苦しんでいる。」については、子どものことを自分の一部と認識するのではなく、一人の人間として見ているので健全な思考なのではないかと思います。
この逆の思考が、”子どもは自分の一部だから意のままにしたい”になるので、それはまた別の違う問題になりそうです。
私が育児が辛いと感じるときというのは、たいてい自分の時間がほしいときだったり、心身の調子が悪いときです。この世の悩みの9割はお金がないことによって起きていると思っています。なので、子育てをしていて時々くる辛い時期には、お金があれば大方のことは解決できるのに!と考えます。
例えば、シッターさんに家に常駐してもらうお金があれば、自分の時間を作ったり、ゆっくり休むことができるので、悩みが解決できると思っていました。
しかし本書によると、母親になって後悔してると主張する人の中には、経済的に貧困な人・豊かな人、子どもと週に数回した合わない人、様々な状況の人がいるとのことです。
よって、問題の原因はお金で解決できないところにあるということです。「母親になって後悔している」問題は、お金で解決できない一割の問題といえそうです。
大抵のことは一度始めても、合わないので辞めるということができます。しかし、母親業は橋を渡るようなものなので、一度渡ってしまったら一生戻ることができません。そういった逃げ場のなさが憂鬱の原因なのかなと思いました。
衝撃的だったのは、インタビューに参加していた方の中には孫がいる方もいたことです。自分の母親にもこういった感情が少なからずあるのかも?と気付くと考え方が大きく変わります。
基本的に一貫してずっと辛いエピソードが続くので影響を受けやすい方は注意したほうがいいかもしれないです。私もしばらく気持ちが沈みました。
しかし、母親になって後悔している人はもちろん、自分の親やパートナーの気持ちを知る上でもおすすめしたい一冊です。