プロセスエコノミー あなたの物語が価値になる 読了
プロセスエコノミー あなたの物語が価値になる
尾原和啓 著
プロセスエコノミーというのは、プロセス(=途中経過)自体を売るという新しいお金の稼ぎ方です。
SNSが普及した一億総発信社会と言われる今、何かを作るだけでは埋もれてしまう時代です。また、情報が豊富にある現代において商品の質で勝負するのも難しいです。そうすると、価格勝負になり疲弊してしまいます。
では、他と差別化するにはどうしたら良いか?を考えたときに、物の制作のプロセスを公開するとよいというのが本書の提案です。
SNSなどを通して商品の制作の過程を見ると、人は感情移入しそれは特別な一品になります。商品の質が大体同じならば、人はより感情移入している方を選びます。
このようにしてプロセスを公開することによって、商品のファンを獲得して他とのアドバンテージを取るのがプロセスエコノミーの基本部分です。
今の30代以下は、家に必要な家電は全てあり、デジタルネイティブであり、娯楽も充実しており、物質的に飢えることがありません。つまり生まれたときから社会に「ないものがない」時代で、尾原さんはこれを「乾けない世代」という言葉で表現しています。
非常に的確なよい表現だと思います。
この「乾けない世代」は物質的なものよりも内面的な充実を重視し、自分が心から好きだと思えるもの、生産者のビジョンや生き方に共感できるものを買いたいという傾向があるそうです。つまり、制作の過程を公開し、共感を求めるプロセスエコノミーは「乾けない世代」とマッチしています。
また、チームラボの猪子さんの、今後世の中は、「役に立つ」と「意味がある」の価値が二極化し、中途半端なものは淘汰されていくというお話も紹介されています。
今後生き残るには、グローバル・ハイクオリティを目指すか、特定のコン・ユにティで熱い想いで支持されるローカル・ロークオリティを目指すかの二択であり、中途半端はないということです。
個人で活動するのであれば、グローバル・ハイクオリティを目指すよりもローカル・ロークオリティを目指す方が現実的かと思います。プロセスエコノミーはそういった時代的な背景に合っているとのことです。
更に、楽天大学学長の中山さんのお話が紹介されています。
人間が夢中になるためには3箇条あり、1、得意であること 2、得意でやっているだけで楽しいこと 3、それが誰かの役に立つ です。
得意なものを楽しむことが目的で、さらに利他的主義であると人間はどんどん夢中になっていくそうです。ただ走っていることが楽しいから走る。そういう人が思わぬ結果を産むそうです。
私が大切にしてる考え方の一つに”走りながら考える”というのがあります。
私は物事を始める前に考えすぎてしまう癖があるので、一旦始めてみて軌道修正をしながら進めることを大切にしています。やってみて初めてわかることもたくさんあります。
本書では、プロセスエコノミーのメリットがたくさん紹介されている一方で、注意しなければならないことについても書かれています。プロセスの公開に夢中になるあまり、最終的にやりたいことを見失って足元を掬われないよう気をつけなければいけません。
尾原さんの著書は全体的にフワッとしているというのでしょうか、抽象的なイメージがあります。それが、100%の解を与えられないことで自分で考える部分が残っていたり、さらにイメージを膨らませてワクワクする余地があるようで、意図的にやっているのであればさすがだと感じます。毎回着眼点ユニークでおもしろいのですが本作も期待通りでした。