『和泉式部日記』読了
和泉式部日記
和泉式部著、川村裕子編
和泉式部日記 (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス)
- 作者: 川村裕子
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川学芸出版
- 発売日: 2007/08/31
- メディア: 文庫
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読み終わってから時間がっているが備忘録として残す。
歴史に残るモテ女、和泉式部による日記。
昨今の恋愛は、LINEで進めるのでしょうか。
現代の恋の流れは、恐らくどちらかが相手を気になって、LINE ID(一昔前ならメールアドレス)を手に入れて、連絡を通してお互いを知り、デートをしてお付き合いに至るといった感じだろうか。
平安時代も現代も多少違いはあったとしても、恋愛の大まかな流れは変わらない。そしてメインツールにおいても、平安時代は手紙で恋を進めるので、手紙か、LINEか、デジタルかアナログかの違い。
つまり、約1000年前の恋愛のプロ・和泉式部の教えは現代にも活かせそうだ。
返事の内容、言葉の選び方はもちろん、返事を返すタイミング、駆け引きすべてが至妙の芸。
好きな手紙はたくさんあるけど、そのなかでも特に好きな十六段の手習い文を紹介。
(原文)
人はみなうちとけ寝たるに、そのことと思ひ分くべきにあらねば、つくづくと目をのみさまして、名残りなううらめしう思ひ臥したるほどに、雁のはつかにうちなきたる、人はかくしもや思はざるらん、いみじうたへがたき心地して、
まどろまであはれいく夜になりぬらんただ雁が音を聞くわざにしてとのみして明かさんよりは、とて妻戸をおしあけたれば、大空に、西へかたぶきたる月の影、遠くにすみわたりて見ゆるに、霧りたる空の景色、鐘の声、鳥の根一つに響きあひて、更に、過ぎにし方、今行く末のことども、かかる折はあらじ、と袖のしづくさえあはれにめづらかなり。
(現代語訳)
他の人は皆ぐっすり寝ているなかで、何をどう考えていいのかわからず、私はただじっと目を覚まし、自分の悲しい運命をひたすら恨めしく思いながら臥せっていました。そんな時、雁が、かすかに鳴いたのです。その声が、―他の人はそんな風に思わないでしょうけれど―ひどくせつなく感じられて、
『うとうとと眠ることもせず、ああ、いったい、いくつの夜が過ぎ去ったのでしょうか。ただひたすら雁の声を聞くことだけ、それだけを私の仕事にして』
と詠んだのです。そして、このようにむなしく夜を明かすよりは、と思って妻戸を押し開けて外を見ました。すると大空を西の方へ傾いた月の光が、遠くまではっきりと澄み渡って見えます。月光のもとでは、霧に煙った空の中で、鐘の音と鳥の声が一つに溶け合い、響き渡り、その音色を聴くにつけても、昔のこと、現在のこと、そして将来のことが、すべての頭の中で重なり合ってくるのです。これほどまでに心を打たれる景色には、二度と再びめぐり逢うことはないでしょう。だから、袖からこぼれ落ちる涙の雫までが、いつもとは違う姿のように私の目には映るのでした。
前半部分のやるせない寂しさに満ちた文章から、後半の情景の部分と、自身と景色が溶け合うような文章に鳥肌がたった。
和泉式部は、論理的で技巧的な書家ではなく、天性の才能と経験から筆を進めるタイプだったよう。こういった抒情や情景を描く上手さは、感性の賜だったのだろう。
この『和泉式部日記』、若いお譲さんが読んだら、影響を受けてしまいそう。
私もきっと10代の頃に読んでいたら、多大な影響を受けていたと思う。
そしてあわよくば、このギミックがわかるような殿方と恋がしたい!なんて言い出していたと思う。
和泉式部日記 (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス)
- 作者: 川村裕子
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川学芸出版
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