『幼児教育の経済学』読了

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『幼児教育の経済学』
ジェームズ・ヘックマン著、古草 秀子 訳

 

 

『「学力」の経済学』に関連して『幼児教育の経済学』も読んでみた。

 

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なぜ幼少期に積極的に教育すべきなのか?
幼少期に適切な働きかけがないと、どうなるのか?
早い段階からの教育で、人生がどう変わるのか?
といった内容について経済学の観点から書かれている。

 

原題が"Giving Kids A Fair Chance"ということもあり、子どもたちに平等な教育や機会を与えることの必要性について述べている本なので、一保護者としてすぐに参考にできる部分は少ないかもしれない。

また、データのほとんどがアメリカでの調査結果なので、日本においても同じことが言えるかというと違う部分もあるような気がする。

教育では、テストの点数や成績、偏差値などの認知力が重要視されがちだが、本書では非認知能力の重要性が強く主張されている。

 

以下は印象に残った内容を紹介します。

 

アメリカには一般教育終了検定(GED)というシステムがあり、GEDに合格すれば高校を卒業しなくても、高校課程を修了した者と同等以上の学力を有すると認定されている。
しかし、アメリカの労働市場では、GED合格者の収益力は、GED資格を持たない高校中退者と同程度であるそうです。

 

人生における成功は賢さ以上の要素に左右されるとされている。意欲や長期的計画を実行する能力、他人との協働に必要な社会性・感情的制御といった、非認知能力もまた、賃金や就労、労働、労働経験年数、大学進学、十代の妊娠、危険な活動への従事、健康管理、犯罪率などに影響する。

 

GED合格者の学力テストの点数は、高校を卒業したが大学へ進学しない生徒と同程度である。また、GED合格者の賃金は高校中退者と同程度だ。GED合格者は、一般の高校卒業者と同じくらい「賢い」けれど、非認知スキルに欠けているという。

非認知能力を育成するのは、幼少期の家庭環境が重要なんだそう。非認知能力の具体的な育成方法に関して本書では、ペリー就学前プロジェクトやアベセダリアンプロジェクトなどを例に挙げている。

私たちが実際に非認知能力と向き合う方法については、『「学力」の経済学』の方が実践可能な内容が紹介されているように思います。

 

 

認知的スキルは11歳ごろまでに基盤が固まるのに対し、性格は20代半ばまで変化の可能性があるというのは非常に興味深かった。物事を判断したり決定したりすることをつかさどる脳の前頭前野がゆっくり発達するためなんだそう。

 

専門職の家庭で育つ子供は平均して1時間に2153語の言葉を耳にするが、労働者の家庭では1251語、生活保護受給世帯で616語だとした。これに対して、3歳児の語彙は専門職の家庭では、1100語、労働者の家庭では750語、生活保護受給世帯では500語だった。

言語は会話を聞いて覚えるものでありますが、日常会話でもここまで違いがあるということに驚きました。子どもにはいろいろな言葉を語りかけるといいのかもしれません。