『「原因と結果」の経済学―――データから真実を見抜く思考法』読了

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『「原因と結果」の経済学―――データから真実を見抜く思考法』
中室牧子 著、 津川友介 著

 

 

以下はAmazonより抜粋

この本を読めば、2つのことがらが本当に
「原因と結果」の関係にあるのかどうか
を正しく見抜けるようになり、身の回り
にあふれる「もっともらしいが本当は間
違っている根拠のない通説」にだまされ
なくなります。この「因果推論」の考え
かたを、数式などを一切使わずに徹底的
にやさしく解説します。

本書を読むにあたって、わたしは「因果関係と相関関係の違い」すらわからないほど前提となる知識を持ち合わせていませんでした。しかし、本書ではデータの見方、分析方法などがわかりやすく説明されているので理解することができました。

 

巷には様々な情報が溢れていますが、それがどの程度信憑性のあるものなのかを判断するのは難しいことです。本書には、ただネットやテレビのいうことを鵜呑みにするのではなく自分で考えるためのヒントが書かれています。

「〇〇をすると××になる」といった情報を目にしたとき、それはどういった情報から出た結論なのか、因果関係なのか相関関係なのかを意識するだけでも、根拠のない通説に振り回される確率は減りそうです。

 

本書で取り扱っているテーマの中で印象的だったものを列挙します。

 

・メタボ健診を受けていれば長生きできるのか→健診を受けたからといって必ずしも長生きにはつながらない

・医療費の自己負担割合を増やしても、貧困層以外の健康状態は変わらない

・高齢者の医療費の自己負担割合が増えても死亡率は変わらない

 

・出生児体重が重い赤ちゃんは健康状態がよい

アメリカ、カナダ、ノルウェー、台湾で行われた大規模な双子のデータを用いた研究によると、出生児体重が重いほうが、その子どもが大きくなった後の成績、学歴、収入、健康状態が良好であることが明らかになった。筆者の1人である中室が双子のデータを用いて行った研究でも、出生児体重が重いほど中学卒業時の成績がよいことが示されている。つまり、「小さく産んで大きく育てよ」は子どものことを考えたら正しいアドバイスとは言えないのだ。

 

最近の経済学の研究成果は、「胎児起源説」を支持するものも少なくない。胎児起源説とは、「胎児期の環境がのちの人生に決定的に重要である」という主張のことだ。これは出生児体重と成績・学歴・収入・健康状態の間にあいだに因果関係があることを示す経済学の研究成果と矛盾しない。そして、ただ単に妊婦に豊かで快適な生活を送ってもらうことの重要性を説くという以上に、妊娠中の母親に対して、社会がどのような保護や支援をすべきか議論するきっかけを与えてくれる。

 

認可保育所を増やしても母親の就業率は上がらない

保育所定員率と母親の就業率のあいだには因果関係を見出すことができない」という驚くべきものだった。この理由として、認可保育園が、私的な保育サービス(祖父母やベビーシッター、あるいは認可外保育所など)を代替するだけになってしまった可能性がしてきされている。もともと就業意欲の高かった女性は、こうした私的な保育サービスを利用しながら就業を継続していた。そのため、認可保育所の定員の増加は、彼女たちに指摘な保育サービスから、公的な保育サービスへの乗り換えを促しただけで、これまで就業していなかった女性の就業を促したわけではなかった。

 

このように、データを元に身近な問題も解説してくれているため、興味を持って読み進めることができました。おすすめの一冊です。